新紙幣から考えるユニバーサルデザイン

昨年9月にデザインが発表され、2024年度上半期から発行が開始される新紙幣。デザインが発表されるや否や、ネット上に飛び交ったのは「ダサい」「違和感がある」というような否定的な意見でした。現紙幣を大きく変更したデザインとなっており、今までは重厚感のあるデザインだったのが、重厚感は薄れシンプルで現代風な印象を受けます。そんな新紙幣ですが、実はユニバーサルデザインの観点からみると多くの工夫がなされているのです。今回は新紙幣のデザインについて考えていきましょう。

なぜ今変えるのか

貨幣や紙幣におけるデザインの変更は過去何度か行われ、その最大の目的は偽造された貨幣、紙幣が出回らないようにするためです。ではなぜ今なのでしょうか?財務省によると、一つ目の理由は、現紙幣の発行を開始してから20年近くが経過し、その間に民間の印刷技術が大幅な進歩を遂げたから。二つ目は、ユニバーサルデザインの考え方を踏まえた紙幣デザインが世界の潮流であることなどを踏まえ、より偽装しにくく、誰にとっても使いやすい紙幣となるようにするため、とのことです。

ユニバーサルデザインの工夫とは?

偽造防止の技術を用いながら、ユニバーサルデザインも意識したデザインになっている新紙幣ですが、具体的にどういった点がユニバーサルデザインといえるのでしょうか?
以下、財務省から発表されているデザイン様式です。


・指の感触により識別できるマークの形状変更及び券種毎の配置変更
・額面数字の大型化(表・裏)
・「ホログラム」及び「すき入れ」位置を券種毎に変更

財務省.” 新しい日本銀行券及び五百円貨幣を発行します “
https://www.mof.go.jp/policy/currency/bill/20190409.html

1.識別マークの形状・配置の変更
今使っている紙幣にも識別マーク自体は存在します。しかし、全紙幣同じ位置にあるためマークの形の違いのみで認識する必要があり、特に視覚障がい者には識別が難しいです。その点新紙幣では券種毎に識別マークの位置が異なるため、誰にとってもわかりやすく変更されています。

2.数字の大型化
額面のアラビア数字を現紙幣よりも大きくすることで訪日外国人にもわかりやすくしています。特に裏面は数字がかなり強調されているようなデザインになっており、色味も一万円札は茶、五千円札は紫、千円札は青というように一目でわかりやすくなっています。さらに一万円札と千円札を見分けやすいよう、“1”の形状を変えているのもユニバーサルデザインの工夫の一つでしょう。

3.「ホログラム」と「すき入れ」の位置変更
現紙幣は一万円札と五千円札の場合、ホログラムもすき入れも同じ位置にあり、紙幣の違いを判別しづらいです。しかし、新紙幣の場合、券種毎にすべて位置が異なるため、判別がしやすくなっています。

分かりやすさ・使いやすさを優先したデザイン

今回は新紙幣を例にデザインの工夫についてご紹介しましたが、紙幣に限らず身の回りのデザインは見た目の良さよりも、分かりやすさや使いやすさを第一に考えられることのほうが多い時代になりました。使い勝手をとれば見た目の良さが損なわれ、見た目の良さをとれば使い勝手が悪くなる、といったようにデザインにおいてトレードオフはつきものです。すべてを網羅したデザインを求めるのではなく、両者ともバランスの取れたデザインを目指すのが良いでしょう。

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